特別編:バンコクナイトのカオソーイ(渋谷)

アオ・カオソーイ!えりです。


今回は特別編。2月1日がとても良い夜だったので、エッセイ仕立てでお送りします。


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渋谷のバンコクナイトに行く前に、おたずねしましょう。マームとジプシー(以下マーム)という演劇する人たちのことを知っていますか。演劇作家・藤田貴大が2007年に旗揚げした団体で、2017年に10周年をむかえた彼らはアニバーサリーツアーを実施。小説家・川上未映子との共作をたずさえ1月30日よりその第二弾をスタート。「みえるわ」東京公演の2日目を私は観ました。会場は渋谷、WWW。





初めてマームの舞台を目撃したのは、2014年10月のこと。野田秀樹の「小指の思い出」を藤田さんが演出するということで、誘ってくれたのが会社の先輩・ひろみさんでした。それまで私は演劇というものにまるで縁がなく、演出って何のこと?という疑問を抱くほどには無知だったのですが、リフレインという特徴的な手法を用いたそれに、釘付けになった。以来、何かにつけひろみさんに誘われ、時には私が誘い、マームを追うようになったんです。


ひろみさんは、やがて転職をはたし「先輩」という感じでもなくなりましたが、会社で顔をあわせることはもうなくても、こまめに連絡を取り合い、芝居や映画、ライブや、食事や、そうしたことを共に楽しむ間柄になりました。2月1日の回には、ミナペルホネンの皆川明さんや、ピースの又吉直樹さんなど知った顔もいくつか見かけたり。それぞれの分野で第一線を担う人たちが、マームとコラボレイションしていて、その共同作業が終わった後もこうして劇場におられる姿をよく見かけます。才能と才能の融合、もしくはぶつかり合い、そういうものを見ると私はいつも芯から震えがくる。


さて、いよいよバンコクナイトのお話を。渋谷のスペイン坂を登り切ったところにある「WWW」が今回の芝居の会場でしたが、ふたりとも坂の途中でタイ料理店の看板を視界にとらえていたのです。東京で2度目の積雪予報が出たこの日、終演後外へ出るとみぞれが降っていたけれど、私たちはこの店でごはんを食べることにしました。「渋谷 カオソーイ」で検索をしても、バンコクナイトが引っかかったことはなかったので、この店の存在に気づいたのは偶然でした。





たった10日を経ての、再びの雪とあって、渋谷の街は空いていました。夜9時だというのに店内にはカップルが一組だけ。タイ人とおぼしき明るい女性店員が、席へ案内してくれます。するとメニューのてっぺんにカオソーイがあるではないか!「Pick Up Lunch Menu」とある。けど、これは、こんなに堂々と主張してるってことは、頼めるのじゃないか。店員さんにできますかと尋ねたら、作ってもらえることになりました。これは、雪の夜の奇跡ということでいいよね。ひろみさんにはもちろん、つねづねカオソーイの話をしていました。ひろみさんの初カオソーイ体験が、こんな夜に実現しようとは。





バンコクナイトのカオソーイは、それはそれはオリジナリティに溢れる逸品で、もやし、青菜、落花生、じゃが芋が入ってる。付け合わせは別皿に、高菜漬けと、レモン、赤玉ねぎ、それから魚介風味のラー油みたいな。茹で麺はコシが強くておいしい。揚げ麺もふんだんにトッピングされて、パクチーもたっぷりです。ひろみさんは、「この麺(パリパリの揚げ麺)がメインなんだと思ってた!」と、すなおに驚いてくれて私の内心はほくほく。ひろみさんとマームを観た夜、みぞれ降る、めずらしく過疎の渋谷で、たまたま見つけたバンコクナイトでカオソーイを食べた。ということが、たぶん一生残る思い出のひとつとして記憶される。ちなみにここは、宇田川カフェを展開するLD&K Recordsが、2017年3月にオープンしたお店なんだそうです。





そうそう、タイティーの文字をみつけて注文したら、バタフライピーのお茶でした。きれいな青をしていて、レモンをしぼると酸に反応して紫色に変化します。初めて飲んだよ。アンチエイジングや眼精疲労の改善に効果があり、髪にも良いらしいのですが、子宮収縮作用や血小板の機能をおさえて血が止まりにくくなる成分もあるそうなので、妊娠中・生理中の方は飲みすぎ注意なのですって。


そして、明日、彼女は結婚式を挙げます。おめでとう。またカオソーイに誘いますね。



■今回のオーダー(税別)
カオソーイ 1000円
レモングラスティー 530円
タイティー 530円
*チャージ 250円




■店舗情報
バンコクナイト
東京都渋谷区宇田川町13−4 コクサイビルC館 1F/2F
050-5594-8761
11:00 - 23:00 /無休


※この記事は、2018年2月に取材したものです。

アオ・カオソーイ!

タイ北部料理「カオソーイ」をこよなく愛するカオソーイ大使のふたりが、カオソーイの魅力を発信します。東京近郊のカオソーイを食べ歩き、カウントしています。

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